吉澤 聡史's profile picture 吉澤 聡史

Member of 決断科学

環境モジュール,Aグループに所属していました.

Ph.D. 副専攻決断科学取得.

自己評価

組織研修ワークショップ(対馬) 報告

 5月16日から18日にかけて対馬において組織研修を行った。組織研修の目的は2点あり、1つ目は対馬に存在する問題は何かということを当事者との対話やフィールド調査を通じて第三者の立場から認識し、自身の専門分野を基に現状を捉えられるような事態把握能力を養成することである。2つ目は様々な専門分野を持つ人員で構成された組織として1つの統合的解決策を提言するために成員同士の交流を促進し、深い信頼関係を築くことである。これら2つの目的に加え、自身の知識・経験から問題解決に向けてどのように貢献できるのかを考察することにより、今後地域と関わる際に直面した問題の解決提案力を向上させることを目指した長期的な目標がある。
 16日に博多港から厳原港に向かう船に乗り、厳原に到着後は万松院と歴史民俗資料館を訪問した。万松院は1579年から1862年までの宗家の墓が設置された場所であり、歴史民俗資料館は対馬の歴史に関する資料の展示を行う施設である。対馬は古き時代から朝鮮半島とは交流があり、遣隋使や遣唐使を派遣する際の通り道になるなどしている。これらのことは朝鮮半島や中国との交流において対馬が重要な役割を担っていたといえる。初日はこの後に対馬青年の家に移動して終了した。
 17日には午前中に青年の家から志多留田ノ浜地区の神宮自然農園の見学を行った。この農園においてカメをはじめとする生物の調査を行ったところ、タイコウチなどの水生昆虫や全国的に数が激減しているコガタノミズアブを採集することができた。これらの生物が生息していることはこの農園が生物多様性に配慮した耕作を行っていることによるだろう。翌日に回収するカメの罠を設置し、一通り農園を見学した後に昼食をとり、再び青年の家に戻った。
 青年の家に戻った後は研修室で対馬市の3人の方々からエコパーク、町おこし、観光についてのお話をしていただいた。対馬には高齢化、農家・林家の減少などが問題となっており、農業が廃れることにより生物多様性の減少などをもたらす。地域社会を活性させ、過疎化を防ぐためには地域においてどのように雇用を生み出すのかが重要となってくる。そのことに関して、エコパーク登録が大きな効果をもたらすと期待される。対馬の観光については釜山が近いため、韓国人観光客が急増している。韓国との関わりは対馬の経済や異文化の理解の面において重要であるが、環境・政治的な問題もある。これらの話を聞き、まとめの作業を行うことによって各々の問題が独立しているわけではなく、様々な分野との関わりがあるということを認識した。そのため、幅広い知識と視点により、深く考える必要があると感じた。
 最終日は前日に仕掛けたカメを捕獲するための罠を回収し、野生生物保護センターに向かった。自分は罠の回収には行っていないが、約40頭のカメが採集された。野生生物保護センターに到着後はツシマヤマネコの保全についてのお話を聞いた。ヤマネコは農業の衰退によって減少したことがわかってきた。つまり、ヤマネコを保全することで農業が活性化し、対馬の自然環境を守ることにつながる。これらのことから対馬市が生態系の保全と人間の経済活動の両立ができる未来像として、ユネスコエコパークの登録を目指している。エコパークの登録が行われれば学術研究の場ともなり、対馬の魅力が増大し、地域社会の活性化につながるであろう。登録に向けて、対馬は島の自然環境の現状を把握することを目的に植生調査などを行っている。このようなときに専門的な研究者の力が地域社会の貢献に役立てるということがわかったため、研究者は他の分野の専門家と連携し、自分の知識や経験がどのように地域社会の発展に寄与できるのかを考える必要があると感じた。
 野生生物保護センターから比田勝へ移動し、昼食をとった後に比田勝港から博多港へ出発した。船内で組織研修のまとめを行った。自分が感じたこととしては組織の一員として機能するためには何が問題であるのかを把握することと問題を解決するために何ができるのかを考えだす力が必要であるということである。これらの能力を身に着けるためには日常的に問題を把握しようとする意識改革と問題を解決するために幅広い視点から考えることが重要であると考えた。